大海での大冒険を伝えるお金、石貨
2024年1月31日
こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。
今年の7月、20年ぶりに新紙幣が発行されます。紙幣に描かれた歴史的著名人も新デザインと共に変わります。 長く慣れ親しんだ1万円札に描かれていた福沢諭吉は「近代日本経済の父」とされる実業家の渋沢栄一になります。2021年に放送したNHK大河ドラマの主人公にもなりましたね。彼は明治初期、出来て間もない大蔵省で日本の近代的貨幣制度を整備しました。この時、私達が普段使っている「紙幣」「円形の貨幣」が誕生したのですが、世界を見渡すと、様々なお金があります。
中でもミクロネシア連邦のヤップ島の巨大な石貨については、一度は聞かれたことがあるのではないでしょうか。
「石のお金」といっても日常の買い物で使うのは米ドルで、石貨は主に冠婚葬祭の儀礼的贈答品や土地の売買などで使用。そのサイズは様々で直径が1~3mという大きなものは、置かれたまま所有権のみが移行するそうです。石貨と名がついているくらいなのでお金としてその昔に流通していたのだろうと思いきや、現在でも使われているというのだから驚きですね。
石貨は20世紀前半までつくられていました。素材はヤップ島では採れない石灰岩で、500km先のパラオ諸島まで出向き、石を切り出して加工。長い航海の末に持ち帰りました。
石の運搬は現代の技術を用いても大変な作業です。まして、数トンもの石を運ぶのは小さなカヌー。太平洋の孤島への復路は、かなりの危険が伴ったはずです。石貨には、そうした大冒険の記憶が刻まれているのです。
「石貨」は島に届くまでの苦労度が高いものほど価値があるそうですが、日々、石と向き合っている石屋としては大いに共感するところがあります。 石貨の実物は東京の日比谷公園や貨幣博物館等、日本でも見ることが出来ます。加工や運搬の苦労に思いを馳せてもらえると嬉しいですね。