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彫刻師 中澤茂政さん彫刻師ブログ

家紋が伝える家族の歴史

2022年2月28日

こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。

まもなく春のお彼岸がやってきます。たびたびお墓参りに行っていても、意外と意識されないのが家紋。一般的に墓石の正面の花立や水鉢などに彫刻されています。

私ども石材店では彫刻原稿を作るために、様々な家紋を集めた家紋集を使っています。しかし、そこにも載っていない、⻑年この仕事に携わって⻑い私どもでも⾒たことのない家紋に出会うこともしばしば。そんな時はお施主様に示されたもの(例えば先祖代々伝わる着物や仏具など)に描かれた家紋をお預かりしてそこから原稿を作成します。

家紋の歴史は平安時代までさかのぼり、当初は貴族や武士の間で使われていました。特に武士達は家名とセットで覚えておくことが、戦場やお殿様とのやりとりで不可欠でした。明治以降には庶⺠にも家紋が普及し、石のお墓が家のお墓として建てられるようになると、家紋を彫られたお墓が増えてきました。

<岐阜城の石段>

皇室が菊紋、徳川家が葵紋であるように、花や植物をモチーフにしたものが思い浮かびますが、扇や網など構造物や道具、蝶やうさぎなどの動物、月や星などを象ったものなどがあり実に多種多様。家紋からは、家族の歴史、ひいては日本の歴史や文化を読み取ることができます。家紋は礼服や、お盆の提灯などにも使われてきましたが、年々⾒る機会も少なくなってきました。

<東京・増上寺の徳川家葵の紋>

今一度、お墓に刻まれているわが家の家紋について調べてみてはいかがでしょうか。

 

「挨拶」の漢字に込められた深い意味

2022年1月31日

こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。

「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」—。挨拶とは、人と出会ったときや別れるときに交わす言葉で、人間関係の基本となるもの。生活環境に慣れてくるとついついおろそかになりがちということで、学校や職場などでの「朝のあいさつ運動」なども日常的に聞かれますよね。

挨拶することでその人の体調や気分もうかがうことが出来ますので、その後の会話も弾みます。私達は仕事柄、様々な思いや状況を抱えていらっしゃるお客様もいらっしゃるので、挨拶のトーンにも気を遣います。

「挨拶」は難しい漢字を使いますが、「挨」は「軽く前に押す」、「拶」は「強く相手に迫る」を意味しています。相反する意味の二語を並べた“挨拶”、ちょっと不思議な言葉ですよね。

元は「一挨一拶」(いちあいいっさつ)という言葉で、禅宗で師匠が弟子の悟りの深さを確かめるために、繰り返し問答をすることをいいました。よくいう” 禅問答”のことです。それが修行者同士の問答を意味するようになり、さらに今のような儀礼的な言葉を表すようになりました。

今では、オンライン画面越しの挨拶も普通になりました。挨拶時には手を振るなどリアルだと馴染みのないオーバーアクションもありますが、これも新たな挨拶の作法になりつつあります。

日常の挨拶では悟りを確かめる緊張感はなくても、相手を思い、誠実な気持ちで言葉を発することは大切にしたいものですね。

 

 

 

思いを伝える石文(いしぶみ)の話

2021年12月31日

こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。

1月23日は1(いい)23(ふみ)、略して「E 文」の語呂合わせから、「電子メールの日」とされているそうです。

新年のあいさつと⾔えば年賀状ですが、今や若い方を中心に電子メールやSNS を使う人も増えています。手段は変わっても、感謝や気遣いの気持ちを文字にのせて伝えることには変わりがありません。

では、人が文字を知らなかった時代はどうやって遠く離れた相手に気持ちを伝えていたのでしょう?

作家・向田邦子さんはエッセイで、古代の人が自分の思いを伝えるために用いたとされる石の手紙、「石文(いしぶみ)」について書かれています。

「男は、自分の気持ちにピッタリの石を探して旅人にことづける。受け取った女は、目を閉じて掌に石を包み込む。尖った石だと、病気か気持ちがすさんでいるのかと心がふさぎ、丸いスベスベした石だと、息災だな、と安心した」(『男どき女どき』収録「無口な手紙」より)

古代の人が石に自分の思いを託し、また石から相手の思いを感じとることができたのは、石には⻑い年月をかけて自然が作り出した、唯一無二の表情があるからではないでしょうか。

同じようにお墓を前にすると、遠いご先祖様や、忘れられない故人を思って手を合わせたくなるのは、石が“⾔葉を超えた何か”を伝える力を持っているからかもしれませんね。

新しい年への願いを表す新春のお花

2021年11月30日

こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。

コロナ禍が落ち着いたとは⾔え、まだまだ予断の許さない⻑いトンネルの中、2021年も年末を迎えます。当店でも感染症対策をしっかりした上で、年末年始のあいさつ回りが忙しくなる時期です。どなたもお忙しくなるシーズンですが、そんな中でも、訪問先や店先に飾られるお花には心が癒やされますよね。

お正月の飾りや生け花に、松や竹とともにあしらわれる南天(なんてん)。冬の寒空をバックに、たくさんの鮮明な赤い実をつける姿が印象的です。

漢方ではせき止めの効用がある実だそうですが、どちらかというと、新春のお花(実)のイメージが強いです。お正月の掛け軸には、南天と水仙を描いた「天仙図」が好まれたほか、妊婦が安産を祈願して床の下に敷くこともあったとか。昔から新春の縁起ものや、災難よけとして使われてきました。

福寿草は「元日草」「朔日草」の別名もある、愛らしい⻩⾊い花。それは冬の日の小さなひだまりのようです。

花の咲く時期が⻑いことが⻑寿、⻩⾊の花が⻩⾦に通じることなどから、様々なおめでたい名前がつけられました。お正月には松や竹、梅などと寄せ植えにしたり、先述の南天の実と合わせて「難を転じて福となす」との意味をこめて縁起物として飾られます。花⾔葉も「幸福を招く花」です。

お花の意味をあらためて知ると、毎年恒例の新春のお花も、コロナ禍の中では特別なものに感じられます。

皆様におかれましても、2022年が良い年になることを心よりお祈り申し上げます。

大仏様について

2021年10月30日

こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。

コロナ禍で修学旅行が中止になったというニュースが多く聞かれますが、「修学旅行」という言葉を聞いて、ご自身の子供の時の思い出が蘇る方も多いのではないでしょうか。修学旅行では、関西では京都や奈良、関東では鎌倉など、古寺の見学が一つは組み込まれていませんでしたか? 当時はなかなか興味が持てなかったかもしれませんが、蘇ってきた思い出と共に、大仏様の正体についておさらいしてみましょう。

大仏は、その名の通り大きな仏様のことで、種類には如来や菩薩像があります。
その中でも東大寺の大仏の毘盧舎那如来(びるしゃなにょらい)、鎌倉(長谷寺)の大仏は阿弥陀如来など、代表的な大仏といえばいずれも如来像です。ちなみに、奈良の毘盧遮那如来は、太陽の光がどんなところにもあまねく届くように、宇宙全体を統一する最高の仏とされ、密教における「大日如来」と同一とされています。
この如来という名前は「悟りを開いた者」という意味で、仏の中では最高位に位置しています。心理に目覚め、悟りを開いた仏とされているからです。外見的な特徴としては、一般的に薄い衣一枚で、装身具も身に着けないことがほとんどです。これは、如来を目指して、様々な格好で手に道具を持って修行されている菩薩、明王、天部の神様とは対象的なお姿です。

大仏様(如来)の一番特徴的な部分として、その髪型を挙げる方は多いのではないでしょうか。
この大仏様たちの頭には丸い粒々がぎっしりと並べられ、短い髪がカールしている様子を表しています。この髪形は巻貝にたとえて「螺髪(らほつ)」とよばれ、お釈迦様が出家したときに髪を短く切り、残った髪が右回りに巻いたことからきています。

このように、体の毛が全て上を向いていることを毛上向相(もうじょうこうそう)といい、菩提心や向上心があることを表わしているそうです。仏の中の最高位となられても、如来は内面に熱い想いをみなぎらせておられるのですね。

「ハロウィン」本場では何のために開かれている?

2021年9月27日

こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。

このブログでは日本古来の風習を取り上げることが多いのですが、海外から入ってきたイベントや行事も年中、盛んに行われていますよね。代表的なクリスマス、バレンタインデーに加えて、 若者や子供達を中心に盛り上がる10月31日のハロウィンも、この数年間で秋の風物詩としてすっかり定着したと言えるのではないでしょうか。

このハロウィンは、ケルト人の伝統的な行事「サウィン」に由来しています。ケルトの暦では(太陰太陽歴でいう)11月1日は収穫を終えた冬の始まりであり新年。10月31日の夜には、ご先祖様や親しい人の霊が帰ってくるとされていました。そのとき悪い霊や悪魔もやってくるため、仮面をかぶったり仮装をしたりと仲間のふりをして、身を守ったそうです。

更に、かぼちゃの灯りは、天国にも地獄にも行けない男性が悪魔にもらった灯りを手にさまよっているという言い伝えに由来しているとか。そういう背景もあって、ハロウィンの行事のある国では11月にお墓参りに行くそうです。日本でいうお盆や大晦日のような行事でしょうか。

今年も昨年に続き、静かな晩秋となりそうですが、秋の夜長はこれまで何気なく行ってきたイベントや行事の成り立ちをご家族と話してみる良い機会になりそうですね。

お参り環境を付属品交換で快適にしてみませんか?

2021年8月31日

こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。

夏から秋にかけては⽇差しがとても強い時期。お墓参りに⾏くときは⽇焼け対策と⽔分補給が⽋かせないですね。お墓は丈夫な⽯で出来ているので⽇に当たり続けてもすぐに傷むことはありませんが、付属品には傷んでくる部分が出てきます。

特に昭和の頃に建てられたお墓は、当時の付属品の仕様が屋外使⽤に耐えられるような素材を使っていなかったこともあり、破損したままお使いの⽅も多く⾒受けられます。

たとえば、プラスチックの花筒は、安価で簡便ですが、⻑年経つと、ヒビが⼊ったり、汚れが⽬⽴ったりしてきます。中には古くなった花筒を外してしまい、⽯の⽳に直接花を挿せないかという⽅もいらっしゃいますが、この⽳には溢れた⽔が底に溜まらないように、⽔抜き⽤の⼩さな⽳が開けられていることも多いのです。やはり、ここはたっぷりと⽔を注いだ花筒を⽤意して、お花を出来るだけ⻑くみずみずしい状態で先祖様に捧げましょう。今ではステンレス製の花筒があり、耐久性もずっとアップしています。⽳の⼤きさが合わない等の場合は⼿直しも承っております。

⾹炉にじかに線⾹を捧げていらっしゃる古いお墓もよく⾒かけます。特に花崗岩は丈夫に⾒えますが、⽕による加熱と冷却を繰り返すと簡単に割れてしまいます。また、⾹炉の中に直接残ってしまう灰を処理するのは⼀苦労です。

そこで、ステンレスの⾹炉⽫を使うと⽯に線⾹の熱が伝わらないようになり、灰の⼿⼊れも楽になります。今建てられるほとんどのお墓には備え付けられていますが、中には、周囲のお地蔵様にお供えするために、追加でお付けいただいたりしています。

他にも塔婆をきちんと⽴てるものがなくて、⾒栄え等でお悩みの⽅へは、キレイに⽴てられる専⽤のスタンド等もあります。交換に必要な⼯事も承っております。

その他、お彼岸のお参り時に気になることがありましたら、お気軽に当店までお問合せください。

「お地蔵さん」は、なぜ⼈気者?

2021年7月26日

こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。

今⽇は、墓地やお寺でよく⾒かけるおなじみの仏像「お地蔵様」について調べてみました。普段の⽣活の中でも、思いがけないところにそっと佇んでいらっしゃる、お寺に縁のない⽅でも馴染み深い仏様。なぜ、こんなにお地蔵さんは親しまれているのでしょうか?

お地蔵様は正しくは「地蔵菩薩」と⾔います。悟りを開いた姿を表した「如来」に対して、「菩薩」はまだ悟りの境地に達していない修⾏中の仏様になります。お地蔵様と同じくらいおなじみの「観⾳様(観⾳菩薩)」、他にも「弥勒菩薩」「千⼿観⾳」など⼀度は聞かれたことがある仏様も皆さん、「菩薩」。仏像界では同僚(?)です。

菩薩たちが私たちに馴染み深い仏様になったのは、装飾品を⾝に付け、⼿には問題解決のための道具をお持ちの姿で、⼈々の苦しみを救うために奔⾛されていらっしゃる “修⾏中の仏様“に、⾃分の姿と重ね合わせ、親しみや頼りがいを感じてきたからかもしれません。

その「菩薩」の中でも「地蔵菩薩」が特に⼈気なのは、⼈助けのためなら⼀⼈何役もこなしてしまう、その万能ぶりからではないかと思います。

例えば、「⼦育て地蔵」「⽔⼦地蔵」があるように、⼦供の守り神として知られています。病気を治してくれると⾔えば、東京・巣鴨の「とげぬき地蔵」が有名ですが、京都・伏⾒稲荷⼤社近くには⻭痛にご利益があるという「ぬりこべ地蔵」という地蔵様もいらっしゃいます。お医者さんだけでなく、⻭医者さんも兼ねていらっしゃるようです。

さらに、死後の世界では、閻魔様の前で情状酌量を願い出る弁護⼠さんのような役割も担っています。天国から地獄まで、死後の6 つの世界を巡回して困っている⼈々を救う姿は、まるでお巡りさんのようです。

⽣まれた時から死後の世界も助けてくださる地蔵菩薩。その働きぶりを知ると、ふとした時に⾒かける道端の⼩さな姿に、⼼から感謝したくなりますね。

 

7⽉?8⽉?お盆はなぜ2通りあるの?

2021年6月30日

こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。

今日はちょっと早い、お盆の話題をしてみます。

「お盆は8⽉」と思いきや、東京を中⼼とした南関東地域でお盆を⾏うのは7⽉だそうです。

東京の下町・佃島などでは7⽉13〜15⽇、年によっては梅⾬があけない中で盆踊りが⾏われるとのこと。

私たちにとっては、夏休みのハイライトと⾔えばお盆。その⾏事を1ヶ⽉早くやるのは何だかせわしない気がしますね。なぜ、お盆の時期が2つあるのでしょうか?調べてみました。

元よりお盆は7⽉15⽇に⾏われてきました。ただし、これは⽇本で太陰暦(旧暦)が使われていたころの話です。それが明治時代に⼊った時に太陽暦 (新暦) を採⽤することになったので、古来から⾏われてきた⾏事も⾃動的に1ヶ⽉早められることになりました。

例えば、7⽉7⽇の七⼣。新暦になった今ではまだ梅⾬の最中です。。

⼦どもたちにとっては夏休み前の忙しい中を縫っての⾏事になっていますが、旧暦では7⽉15⽇のお盆の前⾏事という位置づけでした。

梅⾬の⾬雲に遮られて⾒えないのに、星を愛でる⾏事がなぜこの時期に?と疑問に思われる⽅も多いかと思いますが、こんな理由があったのですね。

お盆も同様に1ヶ⽉早められることになりましたが、それが定着したのは東京などの都市部(7⽉盆)にとどまりました。

地⽅や農村部では、農作業の忙しい時期と重なることもあり、従来のお盆と同じ時期、つまり暦では1カ⽉遅れとなる8⽉15⽇に⾏いました (8⽉盆)。今は全国の7割の地域でこの8⽉盆を⾏っています。

もうひとつ、沖繩などでは旧暦にしたがってお盆を⾏なう地域もあり (旧盆)、8⽉前半から9⽉前半あたりで、こうした地域では毎年⽇程が変わるそうです。

このように、地域によって異なるお盆の時期ですが、時代の波の中でも、先祖への供養を続けてきた先⼈の思いは⼤切に受け継いで⾏きたいものですね。

梅⾬を味わうための⾔葉

2021年5月31日

こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。

不安なニュースばかりのこの頃ですが、⾃然は変わらず四季折々の変化を⾒せてくれます。

6⽉を迎えると早くも梅⾬がやってきます。「じめじめして嫌…」なんて声も聞こえてきそうですが、「恵みの⾬」とも⾔われるように、私たちの⽣活には⾬、そして⽔はなくてはならないものです。

422 語もの⾬の名前を紹介している、その名も『⾬の名前』(⼩学館) という本を広げてみました。

そこには、梅⾬の前に降る⾬に付けられた「迎梅⾬(げいばいう)」に始まり、梅⾬どきの「梅⼦⾬(ばいしう)」、梅⾬明けに降る「送梅⾬(そうばいう)」に⾄るまで、10以上の⾬の名前が並んでいました。

中には、今の時代にはそぐわない名付けですが「男梅⾬」「⼥梅⾬」というものや、⽊々の葉を⻘々と鮮やかに⾒せる「⻘梅⾬」など、この時期の⾬の特徴が細かく細分化されていて、先⼈たちの⾬に対する感性の鋭さに驚かされます。

梅⾬の後、旧暦の七⼣に降る⾬「酒涙⾬(さいるいう)」や「猫⽑⾬(ねこんけあめ)」といったユニークな名前もありました。

何かと残念な象徴に重ねられる⾬ですがここは気持ち次第。

⾃分なりに⾬に命名してみるのも、梅⾬の時期を楽しく過ごす⽅法かもしれませんね。

世間の状況が良くなって⼼置きなく外出できるようになったら、夏のさわやかな⻘空の下、ごぶさたしていたお墓参りに⾏きましょう。

季節の移り変わりが毎年やって来るように、お墓も家族が笑顔でお参りに来られるのを、同じ場所でいつも待っています。