変わりゆく時代を⾒つめ続ける⽯
2021年4月18日
こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。
春の到来とともに、学校や職場で新たなスタートをした⽅も多いのではないでしょうか。
2年前のこの季節、天皇陛下の代替わりとともに、令和の元号のもとで新しい時代が始まりました。昭和は遠くなり、平成さえもどんどん過去へ過ぎていく時間の流れの中ですが、⽯屋としては、これまでの歴史を留める場所としてぜひ覚えておいていただきたいところが東京駅丸ノ内側にある、和⽥倉噴⽔公園です。
※写真は2019年春に撮影したものです。※
この公園の噴⽔は当時皇太⼦殿下だった平成天皇のご結婚を記念し、昭和36年につくられました。全国各地の⽯を⽤いて、⽇本の⽯材⼯芸品の⼿法により制作。直線と円を⽤いたシンプルな造形は⽇本的な美を感じさせます。
⽔を噴出する濃いグレーの⽯にご注⽬。これは「浮⾦⽯(うきがねいし)」と呼ばれる、福島県⽥村郡⼩野町の最北部標⾼896mの⿊⽯⼭で採掘される美しい斑れい岩です。所々に⾦の班が⾒えるのが特徴で、⽔に濡れるといっそう美しさを増します。噴⽔の⽔は斜め上に噴出し、菊の花とつぼみを表現しているそうです。
平成5年、現在の天皇皇后のご結婚時には改修整備が実施され、球形噴⽔のモニュメントなどが新たに設置されました。和⽥倉噴⽔公園はまさに昭和と平成、⼆つの時代をつなぐ場所なのです。
今はコロナ禍の厳しい状況にありますが、家族連れや観光客が思い思いに集う平和な⽇常⾵景が戻ってくる時を、この噴⽔のモニュメントは待ち続けていることでしょう。
ちなみに、この周辺は皇居外苑にあたり、江⼾城の⽯垣を間近に⾒ることができます。
指の先が⼊らないほど精緻に組み合わさった江⼾時代の⽯垣、和⽥倉噴⽔公園のモダンなモニュメント、それらを⾒下ろす丸の内の⽯張りオフィスビルといった、それぞれの時代の⽯が⼀度に⾒られる、歴史の重みを感じられる場所です。
遠出が難しい春ですが、こうした歴史背景を踏まえながらグーグルストリートビューなどで東京の街を散策するのもまた新しい時代ですね。