終活シリーズ「遺影に使う写真を撮ろう」
2025年2月28日
こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。
遺影とは、お葬式などで祭壇に飾る故人の写真のこと。亡くなった後、家族が慌てて遺影用の写真を探してもふさわしいものを見つけるのは一苦労ですよね。
小さな頃、仏間で見た集合写真の一部を引き伸ばしたような先祖の遺影は、表情も画質もイマイチだったな…ということで終活の一つとして、生前に遺影を撮影する人が増えています。
以前であれば、生きている間に遺影写真を撮るのは縁起が悪いとされていましたが、近年はこの「終活」という取り組みが浸透してきており、遺影写真を生きている間に撮影してもらうといった考えが広まるようになりました。
にっこり笑った顔や、自分らしいポーズで撮れるのは生前撮影のメリット。写真館でプロに撮影してもらえば、ご自身で納得のいくきれいな写真でお葬式を行ってもらうことができます。
遺影はご自身がこの世を去った後も多くの方の目に留まり、家族や知人の記憶に残る写真になりますから、お気に入りの写真が用意できるといいですね。
「そこまでは…」と躊躇する人は、行事や旅行のときに写真を撮ってもらうよう意識しておくのもひとつの方法。思い出の写真ともなり、家族に喜ばれるはずです。
大事なポイントとして、生前遺影の準備が出来たら、忘れずに写真の保管場所を家族に伝えるようにしておきましょう。終活の一環として用意する場合には、エンディングノートと一緒に保管しておくのもおすすめです。
昔の人を癒した野趣あふれる石風呂
2025年1月31日
こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。
慌ただしい年末年始が過ぎ、ようやく日常の落ち着きを取り戻してきました。大掃除や年越しの準備、そしてお正月のイベントや親戚の集まりなど、予定が詰まっていた方も多かったのではないでしょうか。その一方で、楽しい時間を過ごした分、気がつけば疲れが溜まっているのを実感しますね。
そんな疲れを癒すには、やっぱりお風呂の湯舟に浸かってゆっくりしたいものです。
ところが、歴史をたどると、お風呂は必ずしもお湯に浸かるものではなかったようです。
「風呂」は「ムロ(室)」に由来し、洞窟のような場所で火を焚き、蒸気を発生させて汗を流す、サウナのような蒸し風呂が起源と考えられるとか。それが石の蓄熱性を活かした「石風呂」です。
夏の炎天下で墓石が火傷しそうなくらいに熱くなるのは、皆さんもご存知ですよね。石風呂は瀬戸内、四国、九州に多く、中でも周防の国(山口県)では、鎌倉時代に東大寺の再建を担った重源上人がこの地から木を伐り出す人たちの保養として作ったと伝えられています。防府市の阿弥陀寺では、石風呂や湯屋などが文化財として残る一方、復元された石風呂は今も保存会の方によって月1回火が入れられ、地域の人々の憩いの場となっています。
石風呂は陶芸の薪窯を彷彿とさせる外観で、中で薪を焚くこと4時間。薪が灰になる頃、周囲の石に熱が蓄えられた「石風呂」が完成します。言わば、大きなかまどで火を焚いた後、その中に人が入るようなもので、確かに熱い訳です。熱をじっくり溜めた石によって、室内温度は今流行りのサウナ好きもびっくり!の130度にもなるというから驚きです。
内部は非常に熱いため、肌はなるべく出さず服のまま入ります。それでも熱い場合、毛布をかぶって熱さをしのぐそう。4畳半ほどの広さの床に敷かれたゴザの下にはヨモギなど季節の薬草が敷き詰められ、癒しの香りに包まれます。 石に囲まれた空間は、癒しとともに自然のパワーも得られ、明日への活力に繋がりそうですね。
終活シリーズ「デジタル生前整理」
2024年12月31日
こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。
近頃よく耳にする「終活」。前回は現在の身の回りにあるものを整理していく「生前整理」について取り上げました。今回はスマホやパソコンが普及した近年、特に欠かせなくなっている「デジタル遺品」の生前整理について取り上げます。
パソコンやスマートフォン、SNS、メール、通信販売サイトをはじめ、利用している機器やサービス、そのパスワードを把握しておくことは、デジタル生前整理において大変重要です。ますは、エンディングノートに「サービス名」「アカウントID」「ログインに必要な登録メールアドレス」「パスワード」などをリストアップしておきましょう。併せて解約方法なども記してあるといいですね。
1,パソコンやスマートフォン、携帯電話
機器に保存してある画像やデータ、メールの履歴などは不要なものは削除しておきましょう。残ったデータは「見られてもよいもの」「見られたくないもの」に分類し、「見られたくないもの」にはしっかりとパスワードをかけ、死後は削除してもらいましょう。
2,ネット銀行、ネット証券、仮想通貨など
銀行や証券口座は相続の問題にもつながるため、必ず遺族に分かるようにしておきましょう。銀行口座は名義人が死去すると、法律により口座は凍結され、解約や預金の引き出しは家族が行うことになります。しかし、ネット銀行やネット証券は有形の通帳などがないため、遺族でもいくつの口座を開設しているのか分からないことが多くあります。予めあまり使わない口座は解約しておくこともおすすめします。
3,オンライン決済のサービス
Wi-Fiや見放題、読み放題などの定額サービスは、手軽で利便性も高いため、現在では多くの人が契約していることでしょう。サービスの規約にもよりますが、これらの月額料金は解約をしない限り支払いが止まらない仕組みになっています。忘れずにリストアップし、一覧にしておきましょう。
4,SNSやブログ
フェイスブックやインスタグラム、Xやラインなど、様々なSNSがあります。死後はアカウントを削除してもらうなど、アカウントやパスワードと共に希望を記しておきましょう。※追悼アカウントとして残せるSNSもある。
デジタル関連は具体的なモノがないだけに、容易に把握できません。残された家族が困らないようにきちんと整理しておきましょう。
難を転じる縁起物「南天」
2024年11月30日
こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。
実りの秋、さまざまな植物が果実をつけますが、秋から冬にかけては、近所のお庭や公園でいろいろな赤い実を見かける機会が増えます。その中でも、11月以降の寒くなってから見かけるポピュラーな赤い実に「南天(なんてん)」があります。
南天は、平安時代に薬用、観賞用として中国から伝来しました。「難を転ずる」の語呂から縁起のいいものとされ、戦国時代には、妊婦が安産を祈願して床の下に敷いたり、武士が出陣の前に床に挿して勝利を祈願したとか。
また、正月の掛け軸には水仙と南天を描いた「天仙図」が縁起ものとして好まれたようです。江戸時代になると、南天はますます縁起木として尊ばれるようになり、厄除け・魔除けとしてどこの家にも植えられるようになりました。
漢方では、咳止め効果の高い生薬として古くから利用されており、現代ではのど飴などにも使われているのは有名な話ですね。
お祝い事で食べるお赤飯に南天の葉を添える習わしは、単に彩りや縁起物としてだけではなく、葉に解毒作用や殺菌・防腐作用があることから取り入れられた先人の知恵です。
今でも縁起物や厄除けとしてお正月飾りに使われたり、松や竹とともにお正月の生け花として玄関や床の間に飾られたりする南天。お正月には忘れずに飾り、難を転じて、福を呼び込みたいですね。
伊東忠太の建築に棲まう動物たち
2024年10月31日
こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。
行動や好奇心が活発になる秋になりました。今回は芸術の秋にちなみ、11月生まれの建築家・伊東忠太について紹介します。
生まれは、江戸末期の1867(慶応3)年。明治、大正、昭和にかけ、建築史家、建築家として活躍しました。
ご存知でない方でも、代表作の「築地本願寺」については知っている方も多いのではないでしょうか。
日本のお寺の外観とは大分雰囲気の違う、ドームがついた特徴的な外観が印象的なこのお寺は、インドの古式仏教建築を元にした意匠をもち、今でも異彩を放っています。ほかにも湯島聖堂、大倉集古館、一橋大学兼松講堂など、多くの建築物を手がけています。
その様式は、日本の伝統的建築、西洋風、インド風まで様々ですが、共通点を挙げると、建物の内外に動物や幻獣たちを棲まわせていること。忠太は幼い頃から妖怪好きで、中国やインドを旅した際にも建物に飾られた幻獣たちに惹かれていたといい、「妖怪研究」という著書があるほどです。
幻獣たちの多くは石造りで、当時の石工が担ったものでしょう。翼のついた獅子といった、不思議な生き物たちが描かれた図面に、石工たちはさぞ戸惑ったのではないでしょうか。彼らが試行錯誤しながら、つくり出していく様子が目に浮かびます。
伊東忠太の想像力や石工たちの技術力を伝える幻獣たちを、今も間近に見て触れることができるのも、石像ならではの魅力ですね。
終活シリーズ「生前整理のススメ」
2024年9月30日
こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。
10数年ほど前から、よく耳にする言葉となった「終活」。前回は残された家族・親族に負担をかけないように準備をする活動の一つとして、「エンディングノート」について取り上げました。今回は、現在の身の回りにあるものを整理していく、「生前整理」について取り上げます。
「生前整理」とは、元気なうちに自分の持ち物を整理しておくこと。物にあふれた故人の部屋や家を片づけるのはとても大変な作業です。整理が済んでいれば、家族や身近な人の負担を減らすことになりますよ。
まずは本やCD、衣服、日記、写真などの身の回りの物について取り掛かりましょう。すでに不要なものは処分。それ以外のものは、「死後に処分」「死後に誰かに譲る」に分類しておきます。家族に協力と理解を得ながら整理できれば、なお良いですね。
もっとも大きな整理と言えば…財産の整理です。
まずは、エンディングノートの回でも触れたように、不動産や預貯金、生命保険や貴金属などの財産を把握し、ノートなどに記録しておきましょう。そのうえで「一部を寄付したい」等、希望がある場合は遺言書を作成しておくと安心です。
自分で書くこともできますが、書き方は法律で定められているので専門家に依頼するのをおススメします。上に挙げたように、専門分野は様々ですので、目的に合うところを選びましょう。
終活シリーズ「エンディングノート」
2024年8月31日
こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。
「終活」という言葉が広く聞かれるようになりました。その背景には、人生の最期は自分の望むように迎えたい、周囲に迷惑をかけないようにしたいと考える人が増えていることがあるのでしょう。
「終活」の一つとして、今回は「エンディングノート」について取り上げます。
「エンディングノート」とは、人生の最期を迎えるにあたり自分の希望を記しておくものです。 たとえば延命治療についての考え、葬儀形態の希望(呼んでほしい人のリスト)、財産の明記(所有している土地や家屋、口座名や通帳と印鑑の場所)など、家族が落ち着いて供養の場を設けられるような情報を主に記載しておきましょう。
ただ、法的に有効とされる「遺言書」とは違いますのでご注意を。相続に関わることなど、将来の家族関係に大きく影響しそうな事柄については、エンディングノートには残さず、法的な手続きを踏んだ「遺言書」に記しましょう。
ノートは書いて終わりではなく、役立ててもらうことが目的です。いざというときに読んでもらえるように、信頼できる人に保管場所を伝えることも忘れずに。加えて、自分の考えを、折りに触れ周囲に話しておくとよいでしょう。そうすれば、ご自分の亡き後に残されたノートの内容も伝わりやすいですよ。
墓地で実感「焼け石に水」
2024年7月31日
こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。
そろそろ夏休みの時期、お盆ももうすぐですね。
お盆はご先祖様の魂が家に帰ってくると言われており、お墓参りを計画されている方も多いのではないでしょうか。ご先祖様へ日頃の感謝を伝えたり、家族のつながりを再認識する大事な行事ですが、この時期は夏の真っ盛り。炎天下での時間をかけたお墓参りや掃除をすれば熱中症になりかねません。
なにより墓石は触れてやけどしそうな熱さで、柄杓で水をかけてもすぐに蒸発してしまいます。まさにことわざの「焼け石に水」状態です。墓石がこれほど熱くなる理由は、石の蓄熱性にあります。灼熱の太陽の光を浴び続けて蓄積された石の熱はなかなか冷めないので、お墓参りは太陽が上がりきらない“午前中”に行くのがオススメです。
一方で、夏は草がどんどん生い茂ります。久しぶりに行ったらお墓が薮になっていた、なんてことも。こうなると少しくらい草取りをしても、これまた「焼け石に水」です。だからといって夏場にたびたび掃除に行くことも難しいですよね。ならば一度のお掃除を効率的に行いましょう。
石屋からのアドバイスとしては、掃除が手際良くできるように草取の道具など、専用の道具を持参すること。日除けとなる長袖・長ズボンの着用や水分補給などの暑さ対策も忘れずに。ちなみにお掃除は、前に進みながら行いましょう。後ずさりしながらの作業は、灯篭などに気づかずぶつかる可能性があるので危ないですよ。
夏のお墓参りは準備万端にして、効率よく短時間で「焼け石に水」に対処しましょう。
富士山の美しさの秘密は“石”にあり
2024年6月30日
こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。
7月の初旬、富士山の山開きが行われます。富士山は日本一高い山であるとともに、その円すい形、左右対称という形状の美しさにより、日本の象徴ともされるとても人気の山です。コロナ明けは、多くの外国人観光客も登山に来るなど、大変な混雑ぶりで話題になっていますね。
なぜ富士山はあのような形になったのでしょう。その理由の一つは、富士山をつくる玄武岩にあります。富士山は4階建ての構造になっていると言われています。富士山は火山であり、数十万年もの間、噴火を繰り返し、1万年前にようやく今のような姿になりました。
数十万年前の「先小御岳」「小御岳」までは粘性の強い安山岩やデイサイト、玄武岩からできており、形も今の富士山とは違っていたそうです。
10万年前に活動を開始した新富士の原型である「古富士」、1万年前から現在表面に見えている「新富士」となって現在の富士山の形になりますが、これらは玄武岩でできています。重要なのは、玄武岩マグマの「粘性が低い」という性質。「古富士」以降、つまり約10万年にわたり噴出し続けてきた玄武岩のマグマは粘り気が弱く流れやすかったため、裾野まで薄く広がり、徐々に今の美しい富士山を形づくってきたのです。
我々石屋に馴染み深い玄武岩といえば、六方石という石があります。これは玄武岩の溶岩が冷却し収縮する時に出来た、断面が五角形や六角形の柱のような細長い石材です。
その独特な色合いと形状の面白さから、庭石などに使われています。灯篭として加工されたり、おしゃれな彫刻を施されたオブジェとしても作られていますので、名前は知らなくともどこかでご覧になられているかもしれません。(当店でもご案内できます。ご興味がありましたらお問合せ下さい。)
富士山の景観や、六方石といった、人間の想像力を超えた絶妙な形を作り出す地球の力には驚かされますね。
硬~い花崗岩にも弱みあり!?
2024年5月31日
こんにちは。愛知県豊田市の中澤⽯材店です。
しとしとと雨が降り続く梅雨。この時期に新緑が鮮やかさを増すように、雨に洗われた墓石の姿もまた美しいもの、土砂降りの雨でもなんのそのです。
日本の墓石に使われていることの多い“花崗岩”は、鉱物の中でもとくに硬い石英を多く含んでいるため、様々な石に比べて風化しにくいと言われています。こんなに硬い石は、何にでも強いと思われるかもしれません。
ところで、木曽川の名勝、寝覚の床に代表される花崗岩特融の地層の中には、自然の景観にも関わらず、まるで人工的に作り出されたような切り立った崖と平らな面で出来た大きな箱を並べたような不思議な地形があります。
これは、木曽川の激流が花崗岩の岩盤を長い年月にわたって浸食してできたものですが、ここから、花崗岩には、3方向の直行する割れ目ができやすいという特性(=弱点)が見えてきます。
私たち石屋は、こうした石の割れやすい方向を「石目」と呼んでいます。かつて人力だけで巨大な石を切り出せたのは、この「石目」を昔の石工達も知っていたから。
大きな石を割るには、まず一直線状にいくつかの穴を開け、「セリ矢」と呼ばれる金具を差し込みます。矢の頭を叩くうちに徐々にヒビが入り、あるとき一気に割れます。機械化が進み手作業は少なくなりましたが、石の産地で開かれるイベントなどで実演があると、見事な石の割れぶり(?)に歓声が上がるほどです。
逆に加工・施工の時は角が欠けないようにとても気を使います。石屋の仕事は豪胆さと繊細さの両面が求められます。みなさんもお墓参りの時は、墓石を傷つけないようにお気をつけくださいね。